小 熊 座 2025/6   №481  特別作品
TOPへ  INDEXへ戻る


特別作品

2025.vol.41 no.481

佐川 盟子

  • 養花天足場囲ひの玻璃館
  • 花時の視感の狂ふ硝子越し
  • 傷癒えて四肢の怠けし春愁
  • 遠目にも濃きは桜の芽ならむ
  • 花便り浮間舟渡を北上す
  • 飛鳥山日暮里上野花の雨
  • 花の雨富士を一瞥にもさせで
  • 遠山へ狼煙揚げたる山ざくら
  • 西国にさしかかるべく花曇
  • 閑けさに鳶の帆翔花ぐもり
  • 淡海より来たる流れを跨ぐ春
  • 賜りしひと日は春をあそぶ古都
  • 哲学を描きかけの画布初桜
  • 竹垣のうしろ竹林桜東風
  • 桜びと京の河原に漫ろなる
  • もつこ橋おづおづ桜餅買はむ
  • 新しき靴にいつしか花疲
  • 水のうへ落花おしあひおされあひ
  • 旅の終りの地に触るるまで糸桜
  • 川岸のこちらあちらに花吹雪

暗室

関根かな

  • 楽しかつた夢を忘れて風光る
  • 青空のかけら集めていぬふぐり
  • 春の雨止まぬ欠伸をうつしてほしい
  • ひとりつきりの部屋にてふてふ影残す
  • もの思ひにふける烏のゐてうらら
  • ひよこ蠅生まれても続いてゐる戦争
  • 花は葉になる音満ちる暗室に
  • 短命でも長命でもうちのなめくぢり
  • 梅雨晴間けふは失踪日和です
  • 放尿の馬のまなこや晩夏光
  • 鳥一羽一羽だけ飛ぶ終戦日
  • 好きなひと好きなパクチー食ふ夜長
  • 自己愛を葬つてゐる大花野
  • 鶏頭を数へられない白昼夢
  • 水洟の明日も出たら言ふつもり
  • 冬日さす角川文庫の巻末に
  • X橋バス停あたり冬の風
  • ガサ入れを察知してゐる鼬かな
  • 降る雪の見えてゐたのかレーニン像
  • 十九句はすべて贋作風薫る

未来の重さ

丹羽 裕子

  • 甍より雀飛び込む花の波
  • 母の手はいつもやさしや花一ひら
  • 会津には会津の訛八重桜
  • 只見線の果てはどこまで山桜
  • 飯事に祖父招かれし八重桜
  • 墓碑一群一めぐりして蝶の昼
  • 子のランドセルは未来の重さ草青む
  • 黒板に明日の日付春夕焼
  • 春嶺に包まれ眠る母の骨
  • 原子炉建屋陽火濃きもなほ著き
  • フレコンバックの山踏まれてもすみれ
  • 囀りや請戸小のエレベーター
  • 落椿咲きし時より華やげり
  • 白木蓮一ひらちぎれ昼の月
  • 雲に乗りたい懸命な風ぐるま
  • 初つばめ空一枚を切りて来し
  • 葱坊主彼女の便り絶えたまま
  • 青葉木菟山にみどりのベール曳き
  • 捕われし杜甫の憂いや躑躅燃ゆ
  • 青春の残像躑躅燃ゆるまま

三界万霊<

長谷川 克史

  • 浮く御魂春の霰が傘を打つ
  • 学び舎にまだおずおずと春の蠅
  • 薄氷を踏みて天球千々となる
  • 鷹化して鳩となるよな日和かな
  • 養老の枸杞飯も茶も間に合はず
  • この橋をまた戻る日や岸青む
  • 連翹のいくらなんでも刈られすぎ
  • 鳥叫ぶ打ちたる田より湯気立ちて
  • 松露掘る昔掘りたる浜に掘る
  • 菜の花の細かに震ふ山裾は
  • 八重桜傷が如くに開き初む
  • 桜散る鼬は海へ走り去り
  • 明易や缶コーヒーを空ける間の
  • 開襟の襟の辺りの昭和かな
  • サイダーにべとつく口に朝来たる
  • 白陶の風鈴の音の転がりぬ
  • 夏至の陽の岬かすめて墜ちにけり
  • 雲多きこの夜良夜と思ひけり
  • 止む後の光を秋時雨と言へり
  • 店に買う七草を煮る刻み煮る
 
パソコン上表記出来ない文字は書き換えています
  copyright(C) kogumaza All rights reserved