小熊座 句 集
 素 足  阿部菁女
      


ふらんす堂 
定価 2700円+税

    
 『素 足』    阿部菁女


 阿部菁女(あべ・せいじょ) 本名 聡子

 1939(昭和14年)   盛岡市生まれ
 1962(昭和37年)   秋田大学学芸学部音楽家卒
 1979(昭和54年頃) 「暖鳥」入会 新谷ひろしに師事
 1987(昭和62年)   「小熊座」入会 佐藤鬼房に師事
 1988(昭和63年)   「小熊座」同人
 
 


   鍋釜につらなるわれや雁帰る


   石垣りんの「私の前にある鍋と御釜と燃える火と」の詩を想起

  するのは私だけではないだろう。無名の女性の一人として、しか

  し、同時に今を生きる人間の一人として世界を見つめ生き方を

  考えていこうとの意志が籠められている。

              高野ムツオ 帯(序)より 


   
自選 十五句


  穴出でし蜥蜴に朝の広田湾

  ヒコロとは白繭のこと山笑ふ


  種物屋ありしあたりの水溜り

  引鴨のいちばんあとを知子仏


  
苗市の真中に磯の荷をほどく

  手向けある白詰草の髪飾り

  燕来る津波の泥を嘴に

  青饅の放つ酢の香や地震のあと

  慟哭や津波跡地のランドセル

  火のごとく椿が咲いて激震地

  芍薬の芽をつきあげる震度7

  春遅き被災地へ発つ玩具箱

  帰らざるもの山彦と草の絮

  もてなしの何も無けれど芒山

  草の穂や生きてこの世を戦はむ





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