小熊座 句 集
 無音の火  大河原真青
      


現代俳句協会
定価 2000円+税

    
 『無音の火』    大河原真青


 大河原真青(おおかわら・まさお)

 昭和25年  福島県郡山市生れ
 平成13年  「桔槹」入会
 平成27年  「あの日より」(50句)にて福島県文学賞準賞受賞
 平成28年  「小熊座」入会
 平成30年  「架空のまち」(50句)にて福島県文学賞正賞受賞
 「桔槹」同人  「小熊座」同人
 現代俳句協会会員

 


  野鯉走る青水無月の底を搏ち


   「野鯉走る」の読後以後、己の範疇を出てゆく句群にこの句の

  野鯉の姿がうつってやまなかった。

   野鯉が走る降雨のあとの青野に充満する水の香が無類して無頼

  なのである。

                    森川光郎   帯より 




   
高野ムツオ選 十五句


  荒星や日ごと崩るる火口壁

  被爆の星龍の玉より深き青


  手のひらの川恋のうすみどり

  根の国の底を奔れる雪解水


  
窓を打つ火蛾となりては戻り来る

  夏果ての海士のこぼせる雫なり


  七種や膨らみやまぬ銀河系

  沫雪や野生にもどる棄牛の眼

  水草生ふ被曝史のまだ一頁

  野鯉走る青水無月の底を搏ち

  骨片の砂となりゆく晩夏かな

  わが町は人住めぬ町椋鳥うねる

  白鳥来タイガの色を眸に湛へ


  凍餅や第三の火の無音なる

  被曝して花の奈落を漂泊す






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