小 熊 座 2022/3    №442 当月佳作抄
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     2022/3   №442   当月佳作抄

                             ムツオ推薦


    大地への罅を走らす鏡餅             渡辺誠一郎

    雑巾のしづく一滴淑気満つ            土見敬志郎

    産土を摑む走り根去年今年            日下 節子

    降る雪と話せば時はまぼろしに          浪山 克彦

    虎落笛明るい未来のエネルギー         春日 石疼

    海鳴りを封じこめたる寒見舞           小笠原弘子

    鮟鱇のふてぶてしさが味となる          久保 羯鼓

    ラブラブのセピアの写真と年を越す       野田青玲子

    ぶつかりてああ生きてゐる街師走        松岡 百恵

    寒雀花さくやうに飛び立てり            棟方 礼子

    微動だにせぬ凍蝶の影うごく           山田 桃晃

    頰被しても蝦夷の目鼻口             小野  豊

    一陽来復見知らぬ鳥の二羽三羽         𠮷野 秀彦

    マフラーを万能薬のやうに巻く           杉  美春

    舟溜りに寒月光のよどみあり           佐藤 みね

    バーゲンの列に紛れし多喜二の忌        宮崎  哲

    淑気満つ風船ガムがクシャリ            髙橋  薫

    地下にアイドル地上に冬将軍           遅沢いづみ

    根雪とは天から雪を招く雪             佐竹 伸一

    悲鳴ひとつ上げずに氷柱地に落ちぬ       小田島 渚

    冬空に終わりはあらず人の死も          千倉 由穂

    寒月光巨岩に目鼻あり眠る             及川真梨子

    新巻や空也のあばら骨の色             武良 竜彦

    雪兎瞳とけゆくとき哭きぬ              後藤よしみ

    漣は龍の鱗であり冬日                一関なつみ

    獅子舞の海へ海へと行きたがる           阿部ゑみ子

    レシートの裏も表も師走かな             桑原 淑子

    星冴ゆる仕掛け絵本を眠らせて           菅原はなめ

    翅を閉じ瞼も閉じて雪女郎              藤巻  淳

    白鳥のやうに手紙を開きけり             𠮷沢 美香

    千の冬越えよとわが名賜わりぬ           齋藤 千冬





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