小 熊 座 2021/8    №435 当月佳作抄
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     2021/8   №435   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    夏蝶の死臭と思う日暮かな                渡辺誠一郎

    後シテがこぼす鱗も梅雨の中               沢木 美子

    水底の藻がそよぎだす夏の月               土見敬志郞

    梅雨満月悩みの種の膨らみぬ              郡山やゑ子

    パン種を秘めておるかに雲の峰             永野 シン

    体内に闇あり天竺牡丹切る                久保 羯鼓

    更衣義足に履かすストッキング              八島 岳洋

    蟻地獄の淵の傾斜よわが余生              植木 國夫

    雨垂れや圧壊深度にわれひとり             𠮷野 和夫

    退屈なリカちゃん人形柿の花               髙橋 彩子

    目算の鰻こんがらがつてゐる               田中 麻衣

    汽笛尾を引きし昔や夏の月                蘇武 啓子

    空はわが王国なりと朴の花                あべあつこ

    狂うほどに退屈昼の青葉雨                中鉢 陽子

    万緑や変異が変異生む細胞               小野  豊

    菜の花を過る黄蝶は黄のままに             栗林  浩

    首抜ける人形はどれ夜店の灯              春日 石疼

    長生きの長き独りにリラの雨               草野志津久

    白南風や傘飛ぶやうに出来てゐる            小田島 渚

    梅雨寒の傘は傘立てごと倒れ              奥村 俊哉

    死者の眼の浮び来るまで桜の実             後藤よしみ

    銀河系宇宙として在り濃紫陽花              岡村 直子

    星涼し三途の川の竹箒                  長濱 藤樹

    薫風の波に溺れてしまいそう               岡田とみ子

    紫陽花のくす玉めきて星を待つ              千葉 和珠





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