小 熊 座 2021/5    №432 当月佳作抄
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     2021/5   №432   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    鯨一頭分の記憶三月十一日            渡辺誠一郎

    パピルスの破片読むかに囀るよ          沢木 美子

    勾玉の孔にはじまる春の山             土見敬志郎

    花冷の水の溜まりしドラム缶             津髙里永子

    木歩句集燈下を歩く冬の蜘蛛            春日 石疼

    山火事の火の粉が過疎をあぶり出す       須﨑 敏之

    みちのくの喉は閊へ花吹雪             浪山 克彦

    開拓農の光源として木の芽山            平山 北舟

    菜の花は忘れたき花群がれる           上野まさい

    春の雲洗濯ばさみで留め置いて          棟方 礼子

    まだ残る枯るる力や破蓮               丸山千代子

    花やむかし宇宙に比する頭脳へと         𠮷野 和夫

    大陸の漂移のつづく猫の恋             大河原真青

    春愁のわが抜け殻の歩きけり            郡山やゑ子

    春はあけぼの夢ならば在庫なし           佐藤 成之

    浅蜊砂吐く無音なる音の満ち            関根 かな

    春星やいつか海嘯また来ると            石の森市朗

    潰されて空缶くの字花の昼             亀山 行房

    朧夜の水紋となる眠りかな             𠮷沢 美香

    梅の香や朝日詰め込むゴミ袋           千葉 悦重





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