小 熊 座    赫  赫  
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ふらんす堂 1,650円(税込)



      佐藤鬼房

                 
成熟に抗して
                   渡辺誠一郎



  鬼房は蛇笏賞の受賞の際、自らを「翼を欠いた鳥」に

 喩え、「永遠の飛翔願望」を抱くと語った。「地を這う

 ばかりの悲しい存在」であり、「土俗に愛憎を傾けすぎ

 る」とも。それは生きることへのしたたかな強さそのも

 のであった。痩身の中には、土俗的なエネルギーが常に

 湧き立っていた。成熟の誘いに抗するように、必死に

 「蒼樹」、あるいは修羅にならんとした。と同時に、幼

 くして故郷を出たという「流民」意識は強く、詩想は遥

 かな彼方を遠望するのが常であった。

  死後刊行された句集『幻夢』には、詩想への思いを隠

 さず、さらに高みをめざす最後の鬼房の姿がある。明日

 に春を待ち妄想の中で、永遠なる命をめざすように、大

 いなる死(生)へと最後の力をふりしぼる。そして、現

 実のさまざまな枷から解き放たれ、次なる世へと向かう

 のだ。


 


   
著者 略歴

          
渡辺誠一郎(わたなべ・せいいちろう)

          1950年  宮城県塩竈市生まれ

          1989年  「小熊座」主宰・佐藤鬼房に師事

          1990年  「小熊座」同人

          1996年  第一回「小熊座」賞受賞

          1997年  『余白の轍』(第一句集)上梓(第三回中新田俳句大賞スウェーデン賞受賞)

          2004年  『数えてむらさきに』(第二句集)上梓(宮城県芸術選奨受賞)

          2014年  『地祇』(第三句集)上梓(第十四回俳句四季大賞、第七十回現代俳句協会賞受賞)

          2015年  『渡辺誠一郎俳句集』上梓

          2020年  紀行文集『俳句旅枕 みちの奥へ』上梓

          2020年  句集『赫赫』上梓


      「小熊座」編集長、朝日新聞「みちのく俳壇」選者、現代俳句協会員、 日本文藝家協会員





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