小 熊 座    赫  赫  
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   (かっ) 赫( かく)
令和2年
深夜叢書
 



      (かっ) (かく)

              渡辺誠一郎



  潟波の春や遠い汽笛を口真似す

  桜より淋しき息が出てしまう

  卓袱台をゆっくりたたむ桜桃忌

  原子炉はキャベツのごとくそこにある

  誰もみな皮一枚の夏日なり

  東京を丸ごとたたく夕立かな

  赫赫と闇に爪掻く老蛍

  不易とは地祇が坐すこと葛の花

  秋蝶の空気がすでにばらばらで

  二番線ホームあの日の秋を見ておりぬ

  鬼房の残党として木賊刈る

  雑煮椀父の仕方で手を添えて

                                        [表紙帯他より]
 


    あとがき


  本句集には、2014年夏から2020年春までの作品、

 412句を編成し収めた。単独の句集としては、『地祇』に

 続く第四句集にあたる。

  この間、東日本大震災から九年が過ぎた。そこに突如、新

 しいウイルスが地上に蔓延し始めた。天変地異は常の事だと

 改めて思う。ただただ生き延びる他ない。

  私はといえば、あまり代わり映えのしない日々が続いてい

 る。強いて変わったことといえば、震災への体験を、少しで

 も内面化に努めるようになったことであろうか。そして母を

 失い、愛犬の死があった。

  集名は、<赫々と闇に爪掻く老蛍>からとった。

  この度出版の労をお掛けした深夜叢書社主齋藤愼爾氏に厚

 く感謝申し上げます。



   佐藤鬼房生誕百年が過ぎ

   2020年8月12日



                    渡辺誠一郎


   
  著者 略歴

          1950年  宮城県塩竈市生まれ

          1987年  「小熊座」主宰・佐藤鬼房に師事

          1990年  「小熊座」同人

          1996年  第一回小熊座賞

          1997年  『余白の轍』(第一句集)上梓

          1998年  第三回中新田俳句大賞スウェーデン賞(第一句集)

                  宮城県芸術選奨新人賞(1997年度)

          2004年  『数えてむらさきに』(第二句集)上梓

          2005年  宮城県芸術選奨(2004年度)

          2014年  『地祇』(第三句集)上梓

          2015年  第14回俳句四季大賞(第三句集)

                  第70回現代俳句協会賞(第三句集)

                  『渡辺誠一郎俳句集』

          2020年  『俳句旅枕 みちの奥へ』



                  「小熊座」編集長(1996年より)

                  朝日新聞「みちのく俳壇」選者

                  現代俳句協会員、 日本文藝家協会員





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