小 熊 座 2020/3    №418 当月佳作抄
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     2020/3   №418   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    海恋ふる子規海いろの竜の玉                我妻 民雄

    大綿を依代として荒脛巾                    土見敬志郎

    喪主として頰ずりしたい寒牡丹                沢木 美子

    空谷に海猫を遊ばせ鬼房忌                  浪山 克彦

    成り行きで卒寿を迎へ屠蘇に酔ふ              八島 岳洋

    冬日差が櫛の目通るほど孤独                中井 洋子

    世間とは冷めしホットミルクの膜               春日 石疼

    初空のほかは映さぬ水溜まり                 上野まさい

    戦あるな冬の百日紅の瘤                   栗林  浩

    独酌や初蝶を呼ぶすべも無し                 増田 陽一

    気嵐の奥の観音鬼房忌                    山田 桃晃

    鉄棒の高さと同じくらい寒い                  唯木イツ子

    月光を孕んでをりぬ枯桜                    中村  春

    オオカミの睦言密か冬の月                  大河原真青

    みんな死ぬリンゴワタムシが来てゐる            佐藤 弘子

    臘梅の臘涙月の光吸ふ                     江原  文

    村捨てし者も入れと浜焚火                   小野  豊

    海底に原発はなし冬すみれ                  丸山千代子

    音楽室のピアノくもらす牡丹雪                 斎藤真里子

    屋根裏に銀河溢るる雪夜なり                 𠮷野 和夫

    着ぶくれてある意味宇宙服である               菅原はなめ

    蠟梅の枝の先まで純情派                    山野井朝香

    腕畳む重機の初夢如何ならむ                 布田三保子

    裸木や我の鼓動を確かめる                  宮崎  哲

    マンションも一つ年取るお正月                 よしの公一

    狼の臓腑か寒の夕焼けは                   石の森市朗

    一木も休まず雪の中に立つ                  後藤よしみ

    寒の雨の葬列の子の未来にも                 佐藤 和子

    鬼房のなき世の雪を積む桜                  小田島 渚

    床下より冬の虹立つ箟峯寺                  菅原 若水

    正月や渥美清の眉の疣                     阿部ゑみ子

    眼裏に鯨のおよぐ漁村あり                   佐藤 みね





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