小 熊 座 2019/12   №415  特別作品
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      2019/12    №415   特別作品



          秋        大和田 節 子


    法師蟬人それぞれに日暮くる

    えのころの揺れしは孤独とも違う

    利久ねずみの雲流れゆき遺族たり

    過ぎ去れば誰もいい人秋の雲

    母の部屋在りし日のままちちろ鳴く

    眠らねば今日が終らぬ月見草

    秋暑し断捨離少しだけすすむ

    晩年や錦木のごとあればよし

    極太の万年筆に秋気満つ

    秋うらら犬にもありし顔なじみ

    しあわせに気づくしあわせ草もみじ

    肉じゃがをほっこりと煮て楽天家

    七人の小人が渡る秋の虹

    新しきタオルの匂い秋初め

    秋高し足腰さすることが増え

    人よりも地球病みおり秋出水

    実ざくろや残る時間に日のあたる

    生来の方向音痴秋うらら

    かばかりの雨に萎れし草の花

    在りし日という寂しさやいわし雲



        うぐいす色      須 﨑 敏 之


    枯れずしてうぐいす色を着重ねる

    錆蛙冬眠は嫌と泣寝入る

    オリオンの来て居る二十三夜講

    鶲来て身辺の戸をノックする

    露の世の新聞骨っぽく在れよ

    キャベツ浮き九月の岸辺少し酸い

    風に土に放射能在り曼珠沙華

    点景にして雪吊りの縄運ぶ

    鉄路絶え漆黒を塗る冬の家

    バサと葛枯れ伏し硝子街区現る

    黄落や職にくすんでしまう勿れ

    秋夕焼遍歴は我立たしむる

    面影のダリアも霜を被る頃か

    行く秋の水平欲す山広場

    勤労感謝葡萄の如く星は生り

    被曝十年村に茶の花散華して

    末枯れて薬効の血のさらさらと

    懸大根日がかけのぼる数え唄

    穭噴くのみ一行の詩も書けず

    上州や蒟蒻玉の大頭蓋





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