小 熊 座   
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 宇井十間

うい・とげん
「小熊座」「海程」等で活動。
2006年「不可知について」により現代俳句評論賞、2009年「千年紀」により現代俳句新人賞、第一句集
『千年紀』により2011年第12回宗左近俳句大賞受賞。
2018年『相互批評の試み』
(岸本尚毅との共著)。
  
  
         
「第20回山本健吉評論賞」受賞

           月刊 「俳句界」 2019年3月号掲載
   

 「スンマ・ポエティカ―造型論における世界観の問題」

                   宇 井 十 間




 受賞の言葉

  実はある時期まで、私はほとんど外国語で書かれた俳句の

 みに関わっていて、日本の俳句事情にはあまり関心がなかっ

 た。日本の俳句に関わるようになったのは十二、三年前の事

 で、それもたまたまそうなったという程度の偶然の出来事に

 すぎない。今でも私は、日本で作られる俳句の多くにあまり

 親近感を感じていない。それらは日本以外で作られる俳句と

 あまりに違うし、しかもその事があまり自覚されていない。

 とりわけ、過去数十年の間俳句という形式ないし制度は、い

 ま在る何かを肯定するための器として、あまりに長く利用さ

 れ続けてきたと思われる。それは見たものをありのままに無

 心に写し取るという「写生」という方法的虚構ともどこかで

 つながっている。しかしその同じ数十年を生きていた金子兜

 太にとって、この俳句という制度は全く別の意味をもってい

 たように私には思われる。いわゆる造型論の一見素朴にも見

 える歴史観は、一方でパウンド、ケルヴェルヌ、トランスト

 ロンメルなどが展開してきた懐疑的な文体とちょうど合わせ

 鏡のように符合している。私が試みたのは、この符合にもっ

 と具体的な形を与える事であり、そのために山本健吉という

 補助線がどうしても必要だったのである。

                      宇井十間




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