小 熊 座 2016/7   №374 当月佳作抄
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     2016/7  №374   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦



    音響なき日の出日の入夏の梅        大場鬼怒多

    蛇といふ音楽速し水の上            我妻 民雄

    晩年が見えて春雨強くなる           阿部  流水

    五月雨の降る静けさに回る地球       小笠原弘子

    淋しさにかたちはなくてソーダ水        日下 節子

    立ち上がれなくなつて象死す旱星       さがあとり

    寝転ぶにふさはしき空風薫る         柳 正子

    太初より糸杉は揺れ春の雲          中村  春

    陽炎の源であり火焔土器            土屋 遊蛍

    一匹の金魚と一人ひらひらと          船場こけし

    囀や言葉にならぬ言葉こそ           大久保和子

    水底の石透くほかは春がすみ         鯉沼 桂子

    夜濯ぎの必ず老いてゆく手足          千倉  由穂

    死のありて生のかがやく青葉かな       清水  里美

    うやむやの関子蜥蜴のふり返る        佐藤  茉

    龍神の大欠伸かな南吹く            及川真梨子

    残像の島の菜の花持ち帰る           𠮷野 秀彦

    手のひらの川蜷恋のうすみどり         大河原政夫

    水満ちてグラス息づく巴里祭          斎藤真里子

    黒揚羽水に映らば母の影            初見 優子

    青春は恋に恋して胡瓜咲く            亀山  行房

    嬰児のからだ丸ごと聖五             岡田とみ子

    雲梯を渡れば虹の端にをり           八島 岳洋

    ただ日永なりき洛中洛外図           橋本  一舟

    夏山の夜明け一樹の匂ひより          丸山千代子

    ミモザ咲く日日薬のまだ効かず         草野志津久





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