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小熊座・月刊
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小熊座創刊30周年記念アンケート 2015.vol.31 no.366
同人・誌友他が選んだ佐藤鬼房愛誦句
塩 竈 阿部志美子
むささびの夜がたりの父わが胸に
夕鵙や遠きは遠く思ふのみ
ものわかりよくて不実や泥鰌鍋
仙 台 阿部 流水
怒りの詩沼は氷りて厚さ増す
戦あるかと幼な言葉の息白し
蟹と老人詩は毒をもて創るべし
宮 城 伊澤二三子
寒暮光瀬頭の渦衰へず
冬蔵す季の重みや父の国
月夜しぐれ銀婚の銀降るやうに
大 阪 上野まさい
切株があり愚直の斧があり
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
帰りなん春曙の胎内へ
東 京 大場鬼怒多
馬の目に雪ふり湾をひたぬらす
鳥帰る無辺の光追ひながら
暖かな海が見ゆまた海が見ゆ
多賀城 岡田 明子
陰に生る麦尊けれ青山河
やませ来るいたちのやうにしなやかに
春蘭に木洩陽斯かる愛もあり
宇都宮 遅沢いづみ
ソレントは夢のまた夢沙羅残花
暗愁の春過ぎて夏そして何
呼び名欲し吾が前に立つ夜の娼婦
福 島 春日 石疼
呼び名欲し吾が前に立つ夜の娼婦
馬の目に雪ふり湾をひたぬらす
陰に生る麦尊けれ青山河
奥 州 鎌倉 道彦
切株があり愚直の斧があり
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
鉛筆を握りて蝶の夢を見る
仙 台 加茂いつゑ
やませ来るいたちのやうにしなやかに
胆沢満月雪の精二三片
女児の手に海の小石も睡りたる
宮 城 日下 節子
春蘭に木洩陽斯かる愛もあり
やませ来るいたちのやうにしなやかに
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
大 和 栗林 浩
切株があり愚直の斧があり
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
陰に生る麦尊けれ青山河
小田原 小島ノブヨシ
青年へ愛なき冬木日曇る
吐瀉のたび身内をミカドアゲハ過ぐ
ほら吹きになりたや春の一番に
相模原 越髙飛驒男
陰に生る麦尊けれ青山河
壮麗の残党であれ遠山火
愛痛きまで雷鳴の蒼樹なり
武蔵野 さがあとり
優曇華や壺中は夜の棲むところ
かまきりの貧しき天衣ひろげたり
吾にとどかぬ沙漠で靴を縫ふ妻よ
青 森 佐々木とみ子
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
日は暮れたり巌鬼が裾の裸子よ
暖かな海が見ゆまた海が見ゆ
仙 台 佐藤きみこ
月光とあり死ぬならばシベリアで
春蘭に木洩陽斯かる愛もあり
夕べ子が駈け星になる荒岬
仙 台 佐藤 成之
切株があり愚直の斧があり
青年へ愛なき冬木日曇る
観念の死を見届けよ青氷湖
宮 城 佐藤 みね
切株があり愚直の斧があり
父の日の青空はあり山椒の木
新月や蛸壺に目が生える頃
仙 台 菅原 玲子
みちのくのここは日溜リ雪溜リ
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
馬の目に雪ふり湾をひたぬらす
横須賀 志摩 陽子
残る虫暗闇を食ひちぎりゐる
夕べ子が駈け星になる荒岬
天牛のぎいと音して日没りけり
茨 城 須﨑 敏之
流星を追ふ両の臂燃しながら
春蘭に木洩陽斯かる愛もあり
飢ゑはわがこころの寄る辺天高し
仙 台 関根 かな
かまきりの貧しき天衣ひろげたり
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
あてもなく雪形の蝶探しに行く
遠 田 髙橋 彩子
陰に生る麦尊けれ青山河
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
切株があり愚直の斧があり
山 形 田中 滿
かまきりの貧しき天衣ひろげたり
陰に生る麦尊けれ青山河
鳥寄せの口笛かすか枯峠
宮 城 土見敬志郎
やませ来るいたちのやうにしなやかに
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
女児の手に海の小石も睡りたる
習志野 長尾 登
齢来て娶るや寒き夜の崖
残る虫暗闇を食ひちぎりゐる
またの世は旅の花火師命懸
宮 城 永野 シン
金借りて冬本郷の坂くだる
女児の手に海の小石も睡りたる
寒き夜を来て美穂の居る我家かな
仙 台 浪山 克彦
暗愁の春過ぎて夏そして何
胆沢満月雪の精二三片
俺は疲れた秋も半ばのすひかづら
石 巻 平川よし美
やませ来るいたちのやうにしなやかに
陰に生る麦尊けれ青山河
優しい水嵩の夕映え子のために
流 山 増田 陽一
梁寒くカフカの夜がまたも来る
松の蜜舐め光体の少年なり
壮麗の残党であれ遠山火
塩 竈 水月 りの
重き荷は捨てよ捨てよと雪女
ほら吹きになりたや春の一番に
死ねば善人蟻一匹がつくる影
宮 城 水戸 勇喜
切株があり愚直の斧があり
陰に生る麦尊けれ青山河
翅を欠き大いなる死を急ぐ蟻
仙 台 宮崎 哲
切株があり愚直の斧があり
艮に怺へこらへて雷雨の木
やませ来るいたちのやうにしなやかに
横須賀 武良 竜彦
吾のみの弔旗を胸に畑を打つ
ひでり野にたやすく友を焼く炎
観念の死を見届けよ青氷湖
塩 竈 吉本みよ子
新月や蛸壺に目が生える頃
馬の目に雪ふり湾をひたぬらす
縄とびの寒暮傷みし馬車通る
石 巻 八島 岳洋
切株があり愚直の斧があり
海嶺はわが栖なり霜の聲
みちのくのここは日溜リ雪溜リ
東 京 柳 正子
切株があり愚直の斧があり
鳥食のわが呼吸音油照り
雪兎雪被て見えずなりにけり
小 平 我妻 民雄
切株があり愚直の斧があり
胆沢満月雪の精二三片
蝦蟇よわれ混沌として存へん
塩 竈 渡辺誠一郎
壮麗の残党であれ遠山火
勿来とはわが名なるべし春の川
露けさの千里を走りたく思ふ
前 橋 あべあつこ
切株があり愚直の斧があり
陰に生る麦尊けれ青山河
みちのくは底知れぬ国大熊生く
宮 城 阿部サタエ
麦の芽が今日このごろの據
籠目籠目潤眼童子に松の芯
女児ひとり降り冬麗の桃の浦
豊 中 石川日出子
日に一度唐松は雪さびしい木
菜食の父に聞えて霧走る
血が薄くなる脱穀の夕まぐれ
塩 竈 伊藤こう子
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
父の日の青空はあり山椒の木
切株があり愚直の斧があり
仙 台 大坂 宏子
切株があり愚直の斧があり
馬の目に雪ふり湾をひたぬらす
やませ来るいたちのやうにしなやかに
福 島 草野志津久
夕鵙や遠きは遠く思ふのみ
俺は疲れた秋も半ばのすひかづら
吾にとどかぬ沙漠で靴を縫ふ妻よ
多賀城 黒田 利男
切株があり愚直の斧があり
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
やませ来るいたちのやうにしなやかに
塩 竈 小松 ユミ
切株があり愚直の斧があり
父の日の青空はあり山椒の木
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
宮 城 坂下 遊馬
切株があり愚直の斧があり
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
いつの世の修羅とも知らず春霙
松 島 櫻井 郁雄
新月や蛸壺に目が生える頃
漁婦なれば朝は浅黄の光負ふ
切株があり愚直の斧があり
塩 竈 佐藤 君江
夕霞小狐ならば呼びとめん
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
やませ来るいたちのやうにしなやかに
塩 竈 佐藤ふじゑ
姥杉の樹齢や緑雨こまやかに
女児の手に海の小石も睡りたる
新月や蛸壺に目が生える頃
泉ヶ岡 末永 榮子
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
陰に生る麦尊けれ青山河
やませ来るいたちのやうにしなやかに
秋 田 椊田 浩子
陰に生る麦尊けれ青山河
やませ来るいたちのやうにしなやかに
切株があり愚直の斧があり
仙 台 髙橋 米子
あこがれのたましひ宿れ山桜
半跏坐の内なる吾や五月闇
魚臭き母帰り来て粗朶を燃す
高 槻 竹内 葉子
蟹と老人詩は毒をもて創るべし
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
綾取の橋が崩れる雪催
塩 竈 西大立目みえ子
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
父の日の青空はあり山椒の木
切株があり愚直の斧があり
塩 竈 中條 朝子
やませ来るいたちのやうにしなやかに
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
姥杉の樹齢や緑雨こまやかに
郡 山 根木 夏実
やませ来るいたちのやうにしなやかに
蟹と老人詩は毒をもて創るべし
月夜しぐれ銀婚の銀降るやうに
塩 竈 羽月 靖子
鳥寄せの口笛かすか枯峠
打ちおろす斧が地を噛む春の暮
夕霞小狐ならば呼び止めん
仙 台 平山 北舟
切株があり愚直の斧があり
やませ来るいたちのやうにしなやかに
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
東 京 増田久美子
生きて食ふ一粒の飯美しき
かまきりの貧しき天衣ひろげたり
よるべなき俺は何者牡丹の木
仙 台 松本ちひろ
重たげな千賀の浦曲の夕桜
半夏の雨塩竈夜景母のごと
夕べ子が駈け星になる荒岬
仙 台 丸山みづほ
野良に先づ礼して初日出るを待つ
胆沢満月雪の精二三片
山の土になれゆく小楢の実
柏 崎 水野 宗子
切株があり愚直の斧があり
やませ来るいたちのやうにしなやかに
またの世は旅の花火師命懸
塩 竈 桃井寿寿惠
姥杉の樹齢や緑雨こまやかに
綿虫の夕空毀れやすきかな
首こきと鳴る骨董の扇風機
宮 城 山田 美穂
縄とびの寒暮いたみし馬車通る
女児の手に海の小石も睡りたる
馬の目に雪ふり湾をひたぬらす
東 京 横田 悦子
鳥帰る無辺の光追ひながら
やませ来るいたちのやうにしなやかに
陰に生る麦尊けれ青山河
福 島 渡邊 文子
切株があり愚直の斧があり
地下茎をたどれば母体手毬唄
長距離寝台列車のスパークを浴び白長須鯨
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