小 熊 座 2015/1   №356 当月佳作抄
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     2015/1  №356   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦



    晩年や尾越の鴨を眦に              土見敬志郎

    仏壇は甚だ広し冬暖か              上野まさい

    セイロンは涙のかたち夕野分          吉野 秀彦

    水のごとき球体として椋鳥一群         春日 石疼

    北溟に行きたし無月ならことに          関根 かな

    揺り籠より墓場に近し羽根蒲団         さがあとり

    狸稲架千体あれど詩にならぬ          永野 シン

    生き物に心臓一つ冬の蝶             小野  豊

    秋の蛇昨日捨てたる男とも            髙橋 彩子

    寒の鯉しずみしあとの底知れず         佐々木とみ子

    冬に入るこの鍋敷もわが生も           森  黄耿

    素うどんや道頓堀のゆりかもめ         増田 陽一

    起き上がり小坊師の起きて今朝の冬      日下 節子

    船路は太陽の道冬雲雀              佐藤きみこ

    広島の六十九年カンナ燃ゆ           髙橋 森衛

    食うて寝てたった百年冬の虹          土屋 遊蛍

    汚しちまった山河厳然鵙日和          須﨑 敏之

    帰り花木霊の寝息とも思ふ            志摩 陽子

    八手色に八手の花や天地病む          篠原  飄

    キリストもマリアも素足雁渡る           斎藤真里子

    自づから今日がその日と銀杏散る       佐藤  茉

    欅には欅の祈り寒暮光              丹羽 裕子

    台風も地震も摂理たそがれも           坂下 遊馬

    よく見えぬ道も道なり吾亦紅           松本ちひろ

    耄碌も許されるべし花八手            黒田 利男





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