小 熊 座 2012/8   №327 当月佳作抄
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     2012/8  №327   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    動くことだけ考えて舟虫は            上野まさい

    蝶のごとおばこの素足通りけり          阿部 菁女

    敷き了へし萍黄泉につながりぬ          平松彌榮子

    葭切や記憶はどれも泥光り            佐藤きみこ

    人は人生みつぎ夜の青葉潮            小笠原弘子

    島姥も沖待ち船もめかりどき           浜谷牧東子

    一草にも潮騒のあり沖縄忌            土見敬志郎

    黄八丈めく島国の梅雨夕焼            津髙里永子

    セシウムの梅雨の伊具根を太らせる       古山のぼる

    姫皮を炊いてふるさと眠そうな           土屋 遊蛍

    金環食は来世で見ます浅蜊汁           野田青玲子

    ごろた石に潮騒聴けり麦の秋           吉本 宣子

    髯づらに母の句多し夏大根            水戸 勇喜

    おおむねは安全だなんて花に雨          鯉沼 桂子

    病経て青梅のごと生き返る             安海 信幸

    死はなべて臭ふ炎天歩きをり            柳  正子

    故郷は死後に在るもの花空木           冨所 大輔

    麦秋の風たてがみとして生きむ           髙橋 森衛

    水鶏鳴く声にはじまる宿の飯            渡辺 智賀

    蚕豆を剝きおり明日がどうあれど          永野 シン

    初蟬や黒髪今も土の中                中村  春

    こんなにも赤子小さし風薫る             畠  淑子

    太陽に滅ぶ痣あり燕子花              武良 竜彦

    考へる葦に青葦原の風               長尾  登

    なめくじが通る金環蝕の下             宇津志勇三

    餓ゑし日の李の味にまだ逢へず          田坂名雅子

    

 

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