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第五回 佐藤鬼房顕彰全国俳句大会


  大会は、去る3月
20日(火・祝日)に塩竈市遊ホールで行われました。応募作品数は、

 一般部門 1,527句、ジュニア部門 3,751句でした。各選者の選考の結果を掲載し


 ます。応募いただいた皆さんに厚く御礼申し上げます。大会の詳細については後号にて

 報告します。


  〈一般の部〉

 佐藤鬼房奨励賞   

     生きるとは冬の土手行く腕の振り                    中村 孝史


  和田悟朗特選

     毛布引き寄せ闇に羊を数へをり                     安部みさ子

     手で量るたとへば地球寒卵                        鯉沼 桂子

     梟や闇とは円を描きつつ                          牛丸 幸彦

  入 選

     見えぬもの降る牧草に仔牛跳ね                     土屋 休丘

     天心の鷹なり平成を生息す                        工藤 俊雄

     秒針は永久の靴音霜の夜                         鯉沼 桂子

     蒼あをと籾殻を焼く無音界                      大豆生田(おおまみゅうだ) 伴子

     かりがねの空Gパンのジョブズ亡し                    鈴木 佐和

     親鸞の膝に手をおく師走かな                        鎌倉 道彦

     寒燈の踏切わたり振り返る                         鈴木大三郎

     稲光時空を持って駆け抜ける                       多賀 平音

     f分(えふぶん)の一のゆらぎや雪解水                       武良 竜彦

     一人居てひとりに余る冬至粥                       佐藤真理子

     青き踏む旅の途中のここちして                      栗林 智子

     湯豆腐の時の流れを掬ひたり                       内海 哲郎

     蟷螂の鎌あげてより枯れ始め                       坂本 綺羅

     今生の負に立ち向ふ黄水仙                        大和田節子

     一片の天の羽衣秋の蝶                           杉岡 壱風


  宮坂静生特選

     梅干を入れんか骨壺にせんか                       大澤 保子

     狐火の集まるみちのくの河口                        斉藤 雅子

     雪掻きて銀河へ道を通しけり                       土見敬志郎

  入 選

     これからを冬たんぽぽとして生きる                    増山 ちさ

     沃度丁幾臭ふがれ場やすみれ草                     たいら 麗

     吹雪く夜の犬に太古の記憶かな                      後藤 朋子

     初日影波が浚ひし跡ばかり                         宇川 啓子

     奥津城は海底にあり寒北斗                         稲玉 宇平

     観音の影も観音龍の玉                           土屋 遊蛍

     秋の日の被曝地闊歩する駝鳥                       庄子  茂

     大地震にはづれし注連を焼きにけり                   鉄本美那子

     月光の蒼きに染まるされこうべ                      大和田節子

     封筒の中は雪暗陸奥の国                         佐藤 成之

     みちのくの一万頭の蝶々よ                         関根 かな

     合掌の無数の灯大つごもり                       えんどうかつこ

     あかときの星に力や初鞴                          山本  源

     時雨るるや固まることのなき思ひ                     丸山 公子


  正木ゆう子特選

     ブータンの野の夢ばかり冬の蝶                     久里 枕流(ちんりゅう)

     臘梅や海見えざれば空仰ぎ                        阿部 敏子

     西空に吹きとばされて冬の月                       田中喜世子

  入 選

     身を隠す絵本の欲しき夜長かな                      池澤 光子

     耳鳴りは鬼房ゆずり枇杷の花                       菊地 恵輔

     祈り念じ願ひ愛しみ寒菫                           山内 栄子

     慟哭のうち重なりて冬怒濤                         松本ちひろ

     受験してみたいなあチキンラーメン                    遅沢いづみ

     成人の日よ発心の漁師たり                         石川 征一

     大雪のボソボソとただボソボソと                      柳  正子

     潮騒の深きに座して牡蠣を剝く                      土見敬志郎

     鳴き声に情のありて寒鴉                          安海 信幸

     手袋の心臓のごときうらがえし                       山田美緒子

     穴一つ開きし落葉か定型は                        松岡 百恵

     一月の瑠璃と化したる青信号                     えんどうかつこ

     小春日のどの折鶴も飛ぶ構へ                      伊澤二三子

     悲しみを全身に吸ひ蕗の薹                         小野  豊


  蓬田紀枝子特選

     ねこやなぎ仏の色と思ひけり                       小野寺耿秋(こうしゅう)

     寒紅や仮設の町にちんどん屋                       三塚 省子

     奥津城は海底にあり寒北斗                         稲玉 宇平

  入 選

     あの日のコート深き闇より取り出せり                  小笠原弘子

     吹雪くなか列車立たすに笛ひとつ                     小林 松風

     石たたきついと立ち寄る鬼房碑                      佐藤 拓郎

     白鳥の汚れてゐたる白さかな                       曽根新五郎

     紙漉きの仕草に水の薄さあり                       牛丸 幸彦

     初旅や東京の雲三つほど                         佐々木智以

     捨畑のわたくしとして茎立てり                       鯉沼 桂子

     山茶花のここにて終る齢かな                       北田 祥子

     夜の雨に潤う若菜刻みけり                         佐藤 みね

     読経の終りし頃の初明り                          石川 征一

     初暦還暦と記す長女かな                          三上つよ子

     遺されし吾の影あり春の昼                         関根 かな

     冬青空手足さみしき日なりけり                       永野 シン

     待春や農具正しく納まりて                         大野みよ子

     あの日来る海辺の菫すべて供花                     小野  豊


  高野ムツオ特選

     ひとつひとつ小さな怒り冬の星                       高橋 米子

     雪遊びしてゐる声が空からも                        関根 かな

     見ゆるほし見えざるほしや去年今年                   井上 薫子

  入 選

     枯蘆や日高見なべて被災の地                      小笠原弘子

     神の留守水平線のふくれをり                       上田由美子

     虎落笛亀の子束子減りてをり                       岡田とみ子

     麦の芽をわが精神の色となす                       大竹 照子

     白湯吹けば冬蝶ひとつ現るる                       中井 洋子

     捨畑のわたくしとして茎立てり                       鯉沼 桂子

     父の座に父の座布団室の花                        山内 栄子

     打ち揚がる舟は紋白蝶だつたのか                    渡辺 規翠

     受験してみたいなあチキンラーメン                    遅沢いづみ

     穭田の空フクシマへつづく空                        鈴木 佐和

     どんど火と原子炉の火と漁火と                      久根美和子

     ふらこゝや母より空へまた母へ                       杉岡 壱風

     子等の眼は藻塩の光帆手祭                        小野  豊

     馬車駆つて行くか枯野の夢を見に                     浪山 克彦


  渡辺誠一郎特選

     つぎつぎに死者帰りくるいぬふぐり                   上野まさい

     線量を言へば信夫野しぐれけり                     渡辺 敏子

     以後の世も人は寄り合ふ寒昴                      柳  正子

  入 選

     大花野人を怨まぬ牛が棲む                       松本詩葉子(しようし)

     遠くまで釣糸の飛ぶ恵方かな                      曽根新五郎

     紙漉きの仕草に水の薄さあり                      牛丸 幸彦

     手で量るたとへば地球寒卵                        鯉沼 桂子

     魂は消ゆることなしつばくらめ                      内山かおる

     凩は太息で受く母郷なり                          狩野 康子

     みちのくの水の迷へる十二月                       中村  春

     日脚伸ぶ遊び足りない子のように                    山家美智子

     まっすぐに言葉少なに海鼠切る                      山野井朝香

     観音の影も観音龍の玉                           土屋 遊蛍

     封筒の中は雪暗陸奥の国                         佐藤 成之

     みちのくの青麦風に受胎して                        関根 かな

     虹なのか蛇なのかいや蝦夷である
                   関根 かな

     笹鳴や被曝の牛が振り返る                        佐藤きみこ



  〈ジュニア部門〉

  佐藤鬼房奨励賞

   人は皆一粒ずつのぶどうかな
                       愛媛県済美平成中等教育学校 二年 大本 昂良


  髙柳克弘特選

   船影や冬の空には涙あり
                          愛媛県今治特別支援学校 二年 津乗 旺希

   河童忌や細き坂道ほそき影
                          茨城県結城第二高等学校 二年 大塚 摩耶

   春のなかですごい音がなる黒い波来る
                          宮城県塩竈市玉川小学校 五年 小野寺康淑

  入 選

   凍星を見る他は無し防波堤
                       愛媛県済美平成中等教育学校 三年 光宗 渓杜

   分かったかい分かるはずなく夏の蝶
                       愛媛県済美平成中等教育学校 三年 石原  稔

   冬茜母を待つ子の小さき眼
                       愛媛県済美平成中等教育学校 五年 鎌田 早紀

   初冬の門に煙草の臭ひかな
                          愛媛県松山中央高等学校 二年 入河 大輔

   桂浜アイスクリンを落としけり
                          愛媛県松山中央高等学校 一年 羽倉 拓摩

   冬の浜煙突がまた増えている
                           愛媛県愛光学園高等学校 一年 稲垣  舜

   ゆきだるまかおをけってとうこうする
                         宮城県塩竈市第一小学校 一年 ささ木はや人

   水風船やぶれはじけて夏すぎる
                          宮城県塩竈市玉川中学校 二年 目々澤史織

   雪虫だけたそがれの街を渡る
                             東京都上水高等学校 三年 豊嶋 麻美

   マネキンのカラータイツや冬の虹
                          岩手県水沢商業高等学校 三年 小野寺美奈

   冬蝶や生きているから会いに行く
                             岩手県水沢高等学校 二年 佐藤 和香

   マフラーやぽかぽかほっこり白い雲
                          茨城県結城第二高等学校 一年 小林 真弓

   世界から届く物資や夏の雲
                          茨城県結城第二高等学校 一年 永塚英里加

   彩雲をながめて春の甲子園
                          茨城県結城第二高等学校 二年 田村 夏海

   家示すがれきの中のかぼちゃの実
                             仙台市中野栄小学校 五年 長谷まりん


  神野紗希特選

   かねがなるにせんじゅうにがはじまるよ
                          宮城県塩竈市第一小学校 四年 小砂子豊太

   夜行バス粒子のような雪がふる
                          宮城県仙台市福室小学校 六年 久野 慧伍

   山眠るガレキも眠る石巻
                         宮城県石巻市万石浦中学校 三年 菊池 駿弥

  入 選

   凍星を見る他は無し防波堤
                            済美平成中等教育学校 三年 光宗 渓杜

   いちじくのごつごつ実る神社かな
                                 愛媛県松山中央高校 久保香奈美

   ホルマリン漬けのウミヘビ冬に入る
                                    愛媛県愛光学園 重見 拓弥

   目閉づれば冬の木立や一人ぼっち
                                    愛媛県愛光学園 大中 博篤

   おひなさま早く出さなきゃ動きだす
                          宮城県仙台市郡山小学校 五年 北川 巧実

   特番で野蒜のことを見ています
                          宮城県塩竈市第一小学校 四年 山縣 健人

   梟のこえが答える子守唄
                             東京都上水高等学校 一年 金杉 美恵

   冬蝶や生きているから会いに行く
                             岩手県水沢高等学校 二年 佐藤 和香

   ラムネ瓶の底覗くようあなたの目
                         宮城県小牛田農林高等学校 一年 阿住  翠

   おつかいのメモを忘れてオリオン座
                        千葉県我孫子市第四小学校 四年 小宮山真代

   はるがきておとうとたちのたんじょうび
                       宮城県仙台市立中野栄小学校 四年 荻原あすか

   ふゆはだらだらしててごはんはおでん
                         宮城県仙台市中野小学校 一年 水戸菜々美

   マフラ―をはらりと脱いでノックして
                          茨城県結城第二高等学校 一年 鈴木 光一

   悲しくてマスクしたまま家に居る
                          茨城県結城第二高等学校 一年 高橋 広樹

   弁当に桜の花びらまいおりる
                          宮城県塩竈市第一小学校 五年 畠山 華歩


  照井翠特選

   水仙花スーツのボタン嵌めて見る
                             東京都上水高等学校 二年 熊谷 綾華

   冬蝶や生きているから会いに行く
                                岩手県水沢高校 二年 佐藤 和香

   サッカーや胸から冬の空へ入る
                       愛媛県済美平成中等教育学校 五年 山下 舞子

  入 選

   母の服こっそり着てみる夏休み
                          宮城県塩竈市玉川中学校 二年 鈴木 由依

   雪止みて天使のはしご雲間から
                   福岡県福岡海星女子学院付属小学校 五年 戝津 英峻

   悪い顔映してくれる冬の川
                  福岡県福岡海星女子学院付属小学校 五年 林田龍之介

   散紅葉考え直してくれないか
                           大阪府吹田東高等学校 一年 森山 雄太

   うたたねの母の手に置くみかんかな
                         岩手県水沢商業高等学校 一年 土谷香奈美

   目がくぼみ独り立たずむ雪だるま
                          岩手県水沢商業高等学校 一年 佐藤 絢香

   卒業の涙が育てた桜の木
                          宮城県塩竈市玉川小学校 六年 八嶋花菜子

   ひまわりは涙を吸って天を向く
                          宮城県仙台市五橋中学校 二年 阿部 悠理

   雪だるまころんで大きくなっている
                          宮城県登米市宝江小学校 四年 芳賀 勇樹

   福笑いいつのまにやら兄の顔
                          我孫子市我孫子第四小学校 四年 竹原康平

   あさがおの種にたくした夢がなる
                         宮城県仙台市中野栄小学校 五年 我妻 祐甫

   家示すがれきの中のかぼちゃの実
                         宮城県仙台市中野栄小学校 五年 長谷まりん

   叶わない夢のふくらむしゃぼん玉 
                          茨城県結城第二高等学校 一年 大島 千景

   校章に光こぼして更衣
                          茨城県結城第二高等学校 二年 小山 竜生


  佐藤成之特選

   青春が季語だと気付いてしまつた
                          大阪府立吹田東高等学校 一年 大池 莉奈

   ひさいした町の光のじょやのかね
                              塩竈市玉川小学校 六年 森居 紘生

   マネキンのカラータイツや冬の虹
                         岩手県水沢商業高等学校 三年 小野寺美奈

  入 選

   ホルマリン漬けのウミヘビ冬に入る
                                   愛媛県愛光学園 重見 拓弥

   考えて戦争をしてなにになる
                          宮城県塩竈市第二小学校 六年 吉田 大将

   しおがましじしんでいえがなかされた
                        宮城県塩竈市杉の入小学校 五年 渡辺 歩美

   祖母の家屋根につららのシャンデリア
                        宮城県塩竈市杉の入小学校 五年 鈴木 大智

   枯葉ふむいろんな音を楽しんで
                   福岡県福岡海星女子学院付属小学校 5年 太田 陽香

   散紅葉考え直してくれないか
                           大阪府吹田東高等学校 一年 森山 雄太

   海水にのまれた庭に咲いたバラ
                           宮城県石巻西高等学校 三年 鈴木 梨恵

   ひょうたんの中につぶやく片思い
                          宮城県仙台市五橋中学校 二年 阿部 悠理

   太ようが出たり入ったり冬の空
                        宮城県仙台市中野栄小学校 一年 尾勝 百華

   家示すがれきの中のかぼちゃの実
                        宮城県仙台市中野栄小学校 五年 長谷まりん

   しゃぼん玉円周率の空回り
                        茨城県結城第二高等学校 一年 阿久津すみれ

   秋天のすべて見透かす鏡かな
                         茨城県結城第二高等学校 一年 舘野 真紀

   桜蘂降る結城公園蕪村句碑
                         茨城県結城第二高等学校 二年 篠崎加捺枝

   人知れず厚氷悲鳴上げをる
                         岐阜県飛騨神岡高等学校 二年 上垣 佳可



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