小 熊 座 2009/12 №295 当月佳作抄
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     2009/12 №295  当月佳作抄
  
                                   ムツオ推薦


    新藁に睡りし卵未生の香              木村 えつ

    麦の芽に陽が降る父の声が降る         佐藤きみこ
 
    空気にも音のありけり返り花            上野まさい

    辷ることのみに億年氷河に夏           土屋 休丘

    貝塚は時間のかたち雁渡し            小笠原弘子

    誘われて邪馬台国へ法師蝉           青野三重子

    実石榴は見落しの詩のごときかな        中井 洋子

    この国のかたちを思ふ初時雨           大場鬼奴多

    オリオン座流星群ああ流行り風邪        我妻 民雄

    アメリカの世紀黄昏鳥渡る             俘  夷藺

    やがてわが骨も混じらむ流星雨         増田 陽一

    先の世も次の世も此処海蠃まはし        渡辺 規翠

    地の果ても花野の果てもまだ知らず       高橋 彩子

    コスモスに揺れおれば友揺れ来たる       吉本みよ子

    尾花あり不可思議光を束ねをり          吉本 宣子

    人はみな炎のかたち秋夕焼            高橋 正子

    七竈前の男の顔忘れ                関根 かな

    五カラットほどの望郷むかご飯          さがあとり

    紅殻に汚れし指の秋思かな            田中 麻衣

    万緑の水面我はうつさずに            及川真梨子

    底力倒れた後の秋桜に              佐藤 レイ

    月光のほかお断りわが栖             永野 シン

    ねずみには鼠の一日赤のまま          中村  春

    闇に匂う金木犀が母の遺書            佐竹 雅士

    星の位置少し動いて露けしや           紺野 リキ 
  


  
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