小熊座

　　　小　熊　座

２００８／８　特別作品

　　
　　　　　　　２００８／８　　　　特　別　作　品

　　　
　　　竹の針　　　　伊　藤　杜　夫

　　　修司の忌生国いつも霧の中
　
　　　柳架飛び豆腐のやうなビル浮かぶ

　　　義経の径に怨の眼蝮革

　　　蕨摘み限界集落踏み荒らす

　　　首はねし血潮躑躅の鬼首

　　
　　

　　
　　　　夏に入る　　　　　高　橋　正　子

　　　薫風と入るや仙台文学館

　　　清和なるせせらぎのごと漱石展

　　　漱石の羽織涼しく灯の下に

　　　緑影を伴ない漱石展巡る

　　　漱石の遺稿青葉の木洩日に

　　　　村田蔵町　　　　永　野　シ　ン

　　　蔵町を走る水音夏来たる

　　　交番は蔵造りなり夏つばめ

　　　御忍びの師にさしかけし白日傘

　　　トンボ玉探しあぐねて夕薄暑

　　　湧水を遣り水として寺寂びぬ

　　　　　大安吉日　　　　渡　辺　規　翠

　　　　大安吉日柱に春の陽が届く

　　　　墨磨って見ただけの事瀧の夜

　　　　一枚の紙が大地に春の闇

　　　　メビウスの輪の中からも花吹雪

　　　声出さぬ老人もゐて花の山

　　　都　　草　　　　阿　部　志美子

　　　揺るぎなき絆なりけり都草

　　　娘の仕草われに似てくる麦の秋

　　　反骨の殻持て生れ田螺の子

　　　待宵草一輪となる一夜あり

　　　疎まれる事に馴れたる梅雨鴇