小 熊 座 第1回佐藤鬼房顕彰全国俳句大会入選集
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    佐藤鬼房
      第1回佐藤鬼房顕彰全国俳句大会入選集  


  第一回佐藤鬼房顕彰     全国俳句大会(報告)

  日 時 平成二〇年三月二〇日 十二時半

  場 所 壱番館塩竃市遊ホール

  選 者 一般部門       金子 兜太
                    黒田 杏子
                    蓬田紀枝子
                    高野ムツオ
                    渡辺誠一郎
        ジュニア部門    高柳 克弘
                    神野 紗希
                    佐藤 成之

  応募句  一般部門      二、七六〇句
         ジュニア部門   三、三二一句
  嘱目句               二二二句

  主催 佐藤鬼房顕彰全国俳句大会実行委員会
  主管 塩竃市公民館・小熊座俳句会



  (AM6:00)

    (AM6:00)
   春の雨が音もなく降っていた。
 今日は「佐藤鬼房顕彰全国俳句大会」の当日である。如何にも雨男であった
 鬼房にふさわしいと思ったが、雨脚が強まると参加者の出足に影響しないかと、
 気を揉んでしまう。

   (AM8:30)
   会場の壱番館塩竃市遊ホールに入る頃には懸念した雨も小降りとなる。ス
  テージの正面には大会名を記したサインボードが、静かに下がっている。あら
  かたの準備は前夜のうちに済ましておいたが、それでも雑事は次々とおこる。

   (AM10:00)
   受付が始まる。この大会へは前掲のように一般・ジュニア両部門で、約六千句
  の応募が集まり、俳人の名前を冠した俳句大会では東北最大の規模となったが、
  やはり当日の参加者の様子が気になる。

  (AM11:00)
  選者の先生方が次々と到着される。鬼房と同年の金子兜太氏が、「ヨッ」と片手を
 挙げて来られる。黒田杏子氏は、「藍生」の句会が開かれた松島から直行された。
 ジュニア部門の選をお願いした、高柳克弘・神野紗希氏が若々しい様子で現れる。

  (PM12:00)
  定刻である。司会(佐藤きみこ)の案内で「第一回佐藤鬼房顕彰全国俳句大会」
 が始まった。定員三七五名のホールはほぼ埋まった。地元の塩竃市や仙台近郊の
 小・中学生の姿も多い。実行委員長(高野ムツオ)の挨拶、佐藤昭塩竃市長の祝辞、
 選者の紹介、大会はまずはスムーズに滑りだした。表彰はジュニア部門を第一部に
 おいた。佐藤鬼房奨励賞は、名取北高校の加賀谷里沙さん。


  あまりにもカシオペヤ座で湯ざめかな   加賀谷里沙

  「ほんとに俳句が好きな子で、年中俳句を作っています」。担任の先生が話してい
 た通り、三、三二一句からの受賞である。
 一般の部の佐藤鬼房奨励賞は石巻の土屋遊蛍さん。

   霜の夜の赤子わずかに発光す      土屋遊蛍

  この大会のメインイベントとなったのが、選者全員での公開選評である。「あんま
 り感心した俳句はなかったなあ」金子兜太氏のあっけらかんとした感想で会場の笑
 いを誘った公開選評は二時間に及び、予想通りの白熱したやりとりに終始した。大
 先輩の金子・黒田・蓬田氏を相手に、爽やかな選評を述べる高柳・神野氏。選評の
 なかで市長賞他の各賞が決まっていく。一般・ジユニアの別なく投句された二二一句
 の嘱目句のなかから、佐藤鬼房奨励賞に決まったのは、

   子雀に遊ぶ盬土老翁神         酒井美代子

  予定の終了時間を押して大会は終わった。最後までご参加いただいた選者の諸先
 生、大会の設立にご尽力くださった塩竃市に、厚くお礼を申し上げたい。

                                      (浪山 克彦 記)
  今号は嘱目の部の入選句を次ページに掲載。
  応募句入選句は次号に掲載の予定。





   第一回佐藤鬼房顕彰全国俳句大会   嘱目の部入選句


  
(一般部門)

  
佐藤鬼房奨励賞         子雀に遊ぶ盬土老翁神      酒井美代子

  
塩竃市長賞            彼岸西風切株と冷え同じくす   小笠原弘子

  
塩竃市芸術文化協会賞    遠景を誉めて桜に近づきぬ    中村たか子

  
塩竃市観光物産協会賞    花好きのはぐれ海猫いて溺谷   浪山 克彦



 
 
金子兜太特選

       彼岸西風切株と冷え同じくす              小笠原弘子

       春の雨鬼房の地(つち)民の壌(つち)          宮崎  哲

       鬼房の石の上なる春の水                鈴木朱鷲女
   
   
入選

       春昼や師の切株は鳥の駅                秋山 笹舟

       待春の一点を視る名はかもめ              越乃 字良

       霾天や鬼房ふらり来るやうな               稲玉 宇平

       子雀に遊ぶ盬土老翁神                  酒井美代子



   
黒田杏子特選

      遠景を誉めて桜に近づきぬ                 中村たか子

      七句碑が声を上げたる春北斗               阿部サクエ

      塩竃の竃の字重くさへづりぬ                小久保 顕


   
入選

      流氷の初日が鬼房忌なりけり                西沢  勝

      出稼ぎはひとり塩竃春十九                 小野寺濤青

      おにふさ-森羅万象木の芽雨               斎藤  勉

      甚平鮫として春昼をやりすごす               矢本 大雪



   
蓬田紀枝子特選

      鬼房は石に籠りて春彼岸                  阿部 流水

      囀や休んでいけと鬼房碑                  阿部 竹子

      筆選ぶ話はずむや鬼房忌                 佐藤 雅子

    
入選

     春畳や巫女すたすたとふりむかず             林 美佐子

     陽炎に揺られて在す鬼房碑                 菅野志知郎

     寄港せし水兵服のおぼろかな                平井 京子

     春寒の闇市に買ふ鯨かな                  鶴岡 行馬



    
高野ムツオ特選

    白梅や塩の漢を思うべし                    金子 斐子

    凍み大根きのふの白とけさの白                斎藤 裕子

    春光の底なし一湾こころの帆                  伊澤二三子


    
入選

    地を這いて生きる一粒春の雨               郡山やゑ子

    おひさまのおっこちそうなはるはやて           さんくみいちろう

    章駄天の胸の奥処の桜かな                阿部風々子

    塩竃の竃の字重くさへづりぬ                小久保 顕



  
渡辺誠一郎特選

    霾天や鬼房ふらり来るやうな                稲王 事平

    春寒の闇市に買ふ鯨かな                  鶴岡 行馬

    海に海図空に天網つばめ来る               佐藤きみこ
 
   
入選

    朽ち木くべパチパチ飛べる鬼房忌            澤  草二

    春連れて金子兜太はみちのくへ             京極 久也

    天に地に七草ありて鬼房忌                武山より子

    外科内科耳鼻咽喉科地虫出づ              伊探 久男



 (ジュニア部門)

   
高柳克弘特選

    花好きのはぐれ海猫いて溺谷             浪山 克彦

    甚平鮫として春昼をやりすごす            矢本 大雪

    春の海何度も思う鬼の声                きょうこ


   
入選

   彼岸西風切株と冷え同じくす           小笠原弘子

   塩竃の竃の字重くさへづりぬ          小久保 顕

   蛇出でてまんずまんずの空模様        山田 史子

   塩竃に羽音集まる桃月夜            大森 知子




  
神野紗希特選

  彼岸西風切株と冷え同じくす          小笠原弘子

  蛇出でてまんずまんずの空模様        山田 史子


 
  入選

  花好きのはぐれ海猫いて溺谷         汲山 克彦

  誕生日の靴軽ろうせよ告天子         伊藤 晴子

  はなももや子等たわむれし跡に咲く      斎藤 恵子

  春の海何度も思う鬼の声            きょうこ



  
佐藤成之特選

  一途なる鬼房の春広ごりぬ          さとうしほり

  誕生日の靴軽ろうせよ告天子        伊藤 晴子

  おひさまのおっこちそうなはるはやて    さんくみいちろう

 
 入選

  春光の海のこぶなる仁王島         菅野 次郎

  切株は春の母音を聞いている       佐藤 みね

  流木の居直ってゐる春の浜         鈴木大三郎

  外科内科耳鼻咽喉科地虫出づ        伊深 久男


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