小 熊 座 鑑賞 季語の時空
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『鑑賞 季語の時空』
       角川書店


定価(本体1800円+税)四六判/並製256ページ

 電子書籍
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   鑑賞 季語の時空

    季語は一瞬を永遠にする

    感動の瞬間を永遠化することで

    俳句は過去から未来へと

    読み継がれていく。

    蛇笏賞作家による、

    現代人のための

    俳句鑑賞エッセイ!



  
さまざまのこと思ひ出す桜かな    芭蕉

 この句には芭蕉のそれまで生きてきた時空がまるごと湛え

 られている。(中略)だが、その内実は芭蕉自身のみが知

 るところ。鑑賞者は、この句から追体験することはできな

 い。できるのは、自らの来し方に委ねて間接的に想像する

 だけだ。そして、それでいいのだ。俳句の鑑賞とは鑑賞者

 の数だけ存在する。さまざまな読みによって俳句の世界が

 更新され永遠化される。


                                    (「はじめに」より)




  本書は『俳句』に平成25年4月から平成27年12月

 まで33回にわたって連載した「俳句の時空」をまとめた

 ものである。このたびシリーズ「角川俳句コレクション」

 の第一冊目として刊行していただくことになった。

  タイトルは『鑑賞 季語の時空』に改めた。元より、私

 の個人的な好みに偏した文章に過ぎず、取り上げた季語の

 数も四十足らずに過ぎない。数えようによって一万をも超

 える季語の数を念頭におけば、このタイトルは誇大広告の

 誹りを免れない。

  連載が開始された平成25年は大震災の三年目を迎えた

 ばかりで、文章の端々にその影が濃く湛えられている。こ

 の3月11日を境にして世界の見方が変わったといえるか

 もしれない。震災以前の俳句にも、その作られた時代、時

 期を問わず、災禍や死者の影を帯びているのではと思う。

 もっとも、これは私の個人的資質に拠るところが大きい。

 東北の辺境生まれの屈折がある。

  東日本大震災の津波被害は多くの犠牲者を出し、深い悲

 しみをもたらしたが、福島の原発事故はより深刻な問題を

 提起した。私などに論じられることではないが、人類が人

 類を滅しているのではないか。人間はこれからどう生きる

 べきかという問いを自然自体が人間に突きつけたといって

 いい。自然は人間の想像を超えた大きな力を持っている。

 しかし、その恵みは無限ではない。自然を畏れよというこ

 とである。

  今後の私にできるのは、せいぜいこれまでの俳句がどん

 な時間や空間を詠み続けてきたか、これからの俳句は何を

 詠むべきかを、狭い視野ながら可能な範囲で模索すること

 ぐらいである。本書をまとめるにあたり、『俳句』編集長

 立木成芳さん、校正、検証などに尽力して下さった村上ふ

 みさん、それに連載の際にお世話になった『俳句』編集部

 の皆さんに心から感謝申し上げる。


  
2019年11月

                   高野ムツオ


                                     (「あとがき」より)




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