句集  花いちもんめ ・  沢木 美子
沢木 美子<さわき みね>
昭和21年  岐阜県美濃加茂市生れ
昭和61年  雲母入会
平成5年   白露入会
平成7年   小熊座同人
平成9年   現代俳句協会
平成10年  中部日本俳句作家会会員

著書   
「弁慶庵と惟然さん」

「風羅念仏にさすらう 口語俳句の祖 惟然坊評伝
翰書房 03-3294-0588
定価3200円+税

須藤徹紹介文より抜粋
本書には、惟然の誕生から死までの評伝、そして没後の弁慶庵の
様子という二つの柱が据えられている。前者では「俳人惟然の誕生」
「漂泊する惟然坊」「惟然調の達成」「郷里き帰住」の四章が立てら
ている。又巻末には付章として風羅念仏音符、家系図、惟然の略
年譜、主要参考文献など詳細な資料が収録されている。惟然理解
への重要なページを構成する。
はないちもんめ序より<抜粋>   佐藤 鬼房
 
 句集名となつた「花いちもんめ」はいうまでもなく「子取り遊び」の童歌。
京都を中心に全国に広まったといわれ、静岡県沼津辺りでは「縄とび唄」
にもなっている。「花一匁」の語源を詳にしないが、子供のころ何げなく唄
いながら、ふるさと感覚のような哀愁を感じていたのではないかと、いまに
して思うのだ。沢木美子は往時と現在を重ねあわせ、

    花いちもんめ続きは鵙に唄わせよ

 と詠む。この晴朗型というべき絶叫へ放つ作者の心痛の深さを私は思う。
淡い郷愁などではないのだ。たしか寺山修司だつたろうか、「花いちもんめ
はたった一匁の花代で買われてゆく娘、つまりこれは人買いと娘を売る親た
ちのやりとりの言葉」と言ったのを思い出す。

    山ひとつ粧い母のいるごとし

    逝く春の世阿弥の声を波間より

    鵜篝の男の胸のごとき闇

    鬼火とは恋の最中に見しものか

    しゃぼん玉惟然に旅荷などあらず

    丈草の紙衣たためば波の音

    むささびの影いちまいの弔旗かな

    大雪も母も吸取紙の中

    羊皮紙の鞣す途中のアマリリス

    春の虹ふいに楽市楽座立つ

    だまし絵の川の流れは母系かな

    茱萸の渋たまる姉妹のほほぶくろ