句集 ・  無   辺    大場 鬼奴多
プロフィール
俳句・大場 鬼奴多
1953年栃木県生まれ。早稲田大学卒業後サラリーマン生活を
経て現在、芭蕉ゆかりの東京・関口芭蕉庵を拠点に芭蕉の検証
研究にあたる。1996年より佐藤鬼房に師事。自然と人間との交
流の中から、自由な発想で詠む五七五をめざす。
「小熊座」同人、国際俳句交流協会会員。

絵・志茂田 景樹・作家
1940年静岡県生まれ。1980年に「黄色い牙」で第83回直木賞
受賞。著書は文芸書400冊。現在は童話や児童書の創作のか
たわら「よい子に読み聞かせ隊」の隊長としてボランティア活動
の普及と実践に取り組んでいる。

   片栗の花あり鳴海理髪店
深海の唄が聴こえる抱卵期(ほうらんき)       
 空耳かヒマラヤ杉と青蜥蜴(あおとかげ)
砂に砂寄り来る烏瓜(からすうり)の花  
疾雷(しつらい)の森に外科医とバレリーナ

  疾雷/激しい雷
尾の長き牝馬(ひんば)に逢ひに行く九月 
  体内にインクを満たす十三夜
セロ弾きは反骨のひと蒼鷹(もろがへり) 

 蒼鷹/彪が細かく鷹狩に使われた鷹の一種  
靺鞨国(マツカツ)の冬満月を思ひけり

靺鞨国/中国・隋唐時代、満州東部から
朝鮮北部にあったツングース系民族の国