句集 棕櫚の箒 安藤 つねお
安藤 つねお
1933年 佐野市出身
小熊座同人
現代俳句協会会員
現在湯河原町居住
序文 佐藤 鬼房 <抜粋>
安藤つねおは、十代から三十代にかけて、詩作に熱中しており、二十代半には
岡崎清一郎などの指導を受け、また、西脇順三郎宅を訪ねている。その後六十歳
までの三十年ほど、文学とは縁遠い仕事に追われ各地を転々としていたという。
句稿集を預って二月ほど経つが「小熊座」に参加した平成五年から平成十一年ま
でを読むと、いままで詩境から遠ざかっていたとは思えない想像力の沸騰がこちら
側に伝わって来るのだ。あたかも、青春時代のイメージが堰を切ったように。
彼は俳句形式の象<かたち>で詩作を復活させたのだと言ってもよい。「青」の反復
暗喩の多用なども豊富な詩詩的蓄積がなければ、ギリシャ神話や聖書、あるいは
星座などの素材は素材だけに終ってしまうだろう。文学と縁遠い三十年としうが、
不屈の背骨として、彼の俳諧を支えてくれて居り、これからも、それが大きな底力と
なって、安藤つねおの風土を豊穣なものにして行くだろう。
ぱらいぞへ安土往還しじみ売り
などは楽市楽座の市などが見え、作者が考えている「常民史観」などもちらついて
面白い。脚気の蠅などがよろよろ出て来るものがある。風刺とも言うべき、
啓蟄や江戸患いの蠅出ずる
陽炎のシジュフォスの山崩れゆく
などは他人ごととは思えない。人間の持つ弱点を粘っこく悲痛なまでに揶揄し告発し
ているのではないか。
天刑の野に佇ちつくす案山子かな
鎌風や昔いくさの耳の塚
六月の少年は青あめふらし
海峡のきつね日和や麦熟れる
しじみ蝶櫂の雫となりにけり
村廃れ火宅を背負う田螺かな
きざわし
木醂や海に突き出る水瓶座
ななふし
七節虫や石に余熱の深き闇
とべら
海鳴りや海桐の花の白鳥座
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