小 熊 座 2026/5   No.492  特別作品
TOPへ  INDEXへ戻る


特別作品

2026.vol.42 No.492

木の家

瀨古 篤丸

  • 木の家の庇の深く古雛
  • いつからか土葬せぬ村春の風
  • 鴨引いた後は余白の昼の月
  • 闇の空勝手に星は春の位置
  • み仏の顔の剝落春の色
  • 落人の山懐やご開帳
  • 来迎仏音立てず来るてふてふも
  • 春はあけぼの電線の混み合へど
  • 春光の片側に各駅停車
  • フランス窓春あけぼのの匂ひかな
  • ことごとく高階は春暁の住処
  • 雨太し工場裏の諸葛菜
  • いつのまに老境に出て春告草
  • 袖口の擦り切れるまで抱卵期
  • 春颯いびつな円の鳩の群
  • 春夕焼爆破の色の重なりぬ
  • 頷いてばかりゐる人春炬燵
  • チューリップNOの形の口をせよ
  • 春疾風砂漠に引かれし国さかひ
  • 春の闇どこに棲みても死の隣

春光

伊澤 二三子

  • みちのくのよき陽だまりの福寿草
  • 冴え返り冴え返りつつ山の色
  • 暁闇を突き破りたる猫の恋
  • 瑠璃色の空へ目こぼす犬ふぐり
  • 桃の日の庭に忙しき鳥の声
  • 春一番身痩せし背なを押しまくる
  • 啓蟄や五百羅漢の泣き笑ひ
  • 胸底に遠景もあり風光る
  • みちのくの風に乗りたるしやぼん玉
  • 春昼や下校帰りの子らの声
  • 菜の花や夕暮れ空を煌めをり
  • みほとけのまぼろしにたつ春愁ひ
  • 朝明けや待つとはなしに蜃気楼
  • 枯蔓にまとふ帽子や春の雪
  • 貨車過ぎて河原に忙し百千鳥
  • 春雨や匂ひ立たせる畝の線
  • 亀鳴くやエプロンの紐締め直す
  • 羽ばたいて春光ゆらす雀かな
  • 戦ひを遠巻きにして雛かな
  • 紅木瓜を枝移りせし雀かな
 

© kogumaza