鉄片の熱さとなりて秋の蝉  
             ムツオ

鉄片とまで言ったのがいい。鉄片が
秋の蝉に通じると高点句でした。

主宰選
  網膜となった青空終戦忌  敏之
主宰・青空そのものが網膜となり終戦日も
それ以降も映している。断定の切れのよさ
と明快さがいい。

  ほほゑみの音して降れりきつね雨  えつ
主宰・きつね雨には土俗のイメージがある。
ほえみの音という形容もいい。メルヘンで
あり、
かたちもできている。

 山の音紡ぎて蜘蛛の囲となれり  えつ
主宰・山の音まで紡いだのがいい。観念的な
がら実感があり山の音でイメージが広がる。

主宰入選句

肝っ玉転がす話大暑かな   えつ
主宰・軽味の楽しさ。  

土塊なり夏終電の少女たち  哲也
   主宰・土塊で決まった。現代風俗の批判、世相を捉えている。                  
夏雲のまま孔版社倒産す   敏之
主宰・「夏雲のまま」に悲しみがある。
 

劣化ウラン爆弾てんと虫だまし  民雄
主宰・てんと虫だましが良かった。
主宰入選句
空蝉に縋られて世に容れられず  彌榮子
主宰・淋しみの句。

昼顔が夢の中から伸びてくる   喜代子
主宰・「夢の中」ではなくもっと意外性があった
ほうがいい。

なめらかに秋来る予感管楽器  廉子
主宰・管楽器の光りと秋のくる感じがよく
合うが
上五が少し気になる。
主宰入選句
晩年や蚊帳吊草の揩スけて   彌榮子
主宰・蚊帳吊草の一つの見方だが上五と付いている。

向日葵の首剥きだしの驟雨かな  哲也
主宰・向日葵の少し垂れた首に降る
驟雨の感じを掴まえている

主宰入選句
棒で薙ぐ原っぱがありわが昭和    飛彈男

主宰・昭和の原風景であるが批評精神が無い。
原っぱがいいがもう少しサビを利かせて欲しい。

夏夕焼ゆすれば軽い目眩かな  廉子
主宰・中七の映像イメージがいいが夏は
いらないのでは。

逆光に弾力をつけしみんみん      洋子

敗戦忌いびつな麺麭を鷲掴み    つねお

この地球(ほし)を蟻の星とぞ伝へ聞く  鬼奴多

やぶからし這ひのぼるなり書肆の棚    陽一

青水無月河童の皿の話など      淑子

蛍籠周りの闇を淋しくす        森衛


主宰からの総評

作品はバライティに富んでいるがバラツキがある。
知的操作の小細工で乗りきるのは無理。比喩は
映像のイメージ化してゆくこと。俳句は身辺にある
ものをコラージュして作る。


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2004/8/16(日)主宰を迎えて「土の会」句会