小 熊 座 2019/9    №412 当月佳作抄
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     2019/9   №412   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    空気振動させてマルハナバチ来たり          我妻 民雄

    展翅せり妻かも知れぬ揚羽蝶              増田 陽一

    老蛍闇に爪かくごとく飛び                 渡辺誠一郎

    夏帽子どこに置いても潮匂う               小笠原弘子

    星雲の片隅にをり心太                  阿部 菁女

    艦の間は無風夏かもめ                  栗林  浩

    耳掻きもこの世のものぞ半夏雨             中井 洋子

    広島は遠しと蟻がかたまれる              上野まさい

    笑はせて淋しくなりぬ茶立虫               柳  正子

    廃棄プラスチック夏潮の綺羅となり           瀨古 篤丸

    緑蔭を浄めてゐたる竹箒                 田中 麻衣

    馬櫪神母子草摘み礼をなす               神野礼モン

    新宿を一皮剥きし夕立かな                髙橋 彩子

    氷河期の話聞かせよ尾瀬河骨              村上 花牛

    遠祖の火か座散乱木の夏の星             田村 慶子

    残像の尾まで電流瑠璃蜥蜴               杉  美春

    寂しさに慣れていたはず青田風             大久保和子

    星屑の受け皿となり湖涼し                斎藤真里子

    我知らぬ我が大いびき梅雨の底             遅沢いづみ

    昼顔は星に合うため生きている             髙橋  薫

    打水や戦中の子の駆ける声                関根 かな

    ダリア剪る揺れしものから悉く               須藤  結

    銀漢の白を忘れてゐる流れ                吉沢 美香

    ぼうふらの沈むときこそきらきらす            小田島 渚

    動物園にも夜はあるなりソーダ水            菅原はなめ

    太陽横断毛虫は全霊で縮む               山本  勲

    シーサーよ海よ語れよ沖縄忌               佐藤よし江

    我よりも我知るカルテさみだるる             小笠原祐子

    或る日妻より蛇の鱗のこぼれおり            八島ジュン

    平凡が幸せなのか胡瓜揉む                亀山 行房





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