小 熊 座 2018/9    №400 当月佳作抄
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     2018/9   №400   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    魂を隠しきれない水着かな               渡辺誠一郎

    夕顔が咲く尾花沢どん詰まり              阿部 菁女

    雲を見るボオドレエルと巴里の蝿           増田 陽一

    梅雨の月眺めるコインランドリー            髙橋 彩子
 
    夏落葉光の中を笑うごと                 永野 シン

    炎昼や投函の音ひしやげたる             土見敬志郎

    戦争を忘れるなよと夏の星               上野まさい

    太陽より飛んで来たのか黒揚羽            丹羽 裕子

    青蘆原水の底より昏れにけり              日下 節子

    梅雨の月緋牡丹お竜老いにけり            中村  春

    人もまた鉱物となる大南風                関根 かな

    眉溶けてのっぺらぼうとなる溽暑            蘇武 啓子

    よく動く肩甲骨の日焼かな                斎藤真里子

    東京は炎天のほか何も無し               田村 慶子

    蟬時雨地に染みており息を吸う             及川真梨子

    金色の如来の目尻にも酷暑               一関なつみ

    滝音を返しつづくや一揆の碑               渡辺 智賀

    巻き貝の渦より湧きぬ雲の峰              阿部志美子

    腸の色もしろがね銀竜草                 太田サチコ

    滴りがやがては胆沢扇状地               鎌倉 道彦

    大向日葵息はゆつくり吐きませう            郡山やゑ子

    力まないことも実力雲の峰                丸山千代子

    砂利をかむ車輪の音にある溽暑             鎌倉 道彦

    蓋に錆瓶に埃の蝮酒                    上田由美子

    放哉の海なり水母浮いてをり               佐野 久乃

    パソコンに付き合うてゐる金魚かな            塚本万亀子

    虫の夜のからだ内より燐光す               若田  郁





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