小 熊 座 2018/5    №396 当月佳作抄
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     2018/5   №396   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    自転車にぜい肉はなし鳥曇               渡辺誠一郎

    朧月うっかりコンと啼くところ               沢木 美子

    卒寿とはいかなる星か雪ねぶり             山田 桃晃

    陽炎にいつかは溶けるわが骸              八島 岳洋

    生れ来しゆゑ戦火見て桜見て              上野まさい

    宇宙にも誕生日ありクロッカス              春日 石疼

    飯舘の空へ尾を立て孕み猫               永野 シン

    ふらここの前透明の壁がある               森  黄耿

    蟻塚もがじゆまるの根も骨の色              津髙里永子

    魂まで呑み込めぬ海初蝶来                大久保和子

    この星しか帰る星なしシャボン玉             さがあとり

    凩をつかい果して村灯る                  渡邊 氣帝

    裏庭の薄氷にしみ入るショパン              遅沢いづみ

    花芽らと共に履きたやトーシューズ            𠮷野 和夫

    花陰が蛍光灯にのびている                千倉 由穂

    逝く母の陰より生れし胡蝶かな              あべあつこ

    薄氷は太陽だけを乗せる舟                牛丸 幸彦

    雪の牛舎聴こえぬはずの咀嚼音             大河原政夫

    千呼万喚秩父に満ちぬ毛蚕の声             後藤 悠平

    木の根開く会津藩士の声が噴く              佐藤よし江

    早寝する夢に蒲公英摘むために             草野志津久

    螺子回すことなき時計風光る                岡田とみ子

    春ショールふわりあの世に出てゆかん          佐藤真理子





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