小 熊 座 2017/10    №389 当月佳作抄
TOPへ戻る  INDEXへ戻る






     2017/10   №389   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦



    憂国の青筋であり大夕立                   渡辺誠一郎

    胎の児も玉音聞きぬ海灼けて                上野まさい

    送り火の消えて茗荷の花あかり               阿部 菁女

    苦瓜に百の涙状突起あり                   我妻 民雄

    青胡桃まだ山祇のものであり                 小笠原弘子

    涙いまかわく途中や草かげろう                沢木 美子

    夏蝶が囁く海へ行つて来ます                 関根 かな

    蛍より阿弖流為の闇始まりぬ                 中村  春

    昼顔に恋の疲れのやうな雨                  鯉沼 桂子

    人形の髪の寝ぐせや明易し                  斎藤真里子

    神が鈴振れば鉄漿蜻蛉舞ふ                 水戸 勇喜

    大皿の西瓜の匂ひ父は亡し                 坂下 遊馬

    夜濯ぎの渦や漂泊銀河まで                 吉野 和夫

    灯籠に遠くたたずみ帰省せず                千倉 由穂

    わが身にも迷路あるなり心太                 篠原  飄

    焦土の色(つるばみ)の色八月は             佐藤 弘子

    他界にも星は生まれて稲の花                佐藤 みね

    昼顔の向きあっている貨物船                渡辺 智賀

    象の目の皺に隠れる大暑かな                牛丸 幸彦

    虹の橋かかりては消え移民の島              丸山みづほ

    水中花帰るところがあるのなら               水月 りの

    風呂敷は四角花野は無限大                 益永 孝元

    架空の町架空の橋を金魚売                 大河原政夫

    揚花火照らし出したる口の闇                みぎて左手

    帰るといへど避難先なりねぢればな             髙和 文子

    豊さんがふたば未来と云つてた夏              唯木イツ子





パソコン上表記出来ない文字は書き換えています
  copyright(C) kogumaza All rights reserved