小 熊 座 2017/6    №385 当月佳作抄
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     2017/6   №385   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦



    命など見えては困る万愚節              渡辺誠一郎

    住まふ屋根住まはぬ屋根や春の月         我妻 民雄

    三月や座棺のごとく干潟岩              土見敬志郎

    どの木にも高き空あり百千鳥             日下 節子

    春泥をひと跳びにしてひと弾み            中井 洋子

    ごむ鞠の行方や梨の花月夜             阿部 菁女

    何人も乗せない決まり花筏              𠮷野 秀彦

    音立てぬものに死のあり初蝶来           瀬古 篤丸

    陸奥の国足の神様いて長閑             神野礼モン

    春満月尻尾出さうなややを抱き            大西  陽

    薄霞木霊の返事遅くなる                佐藤 みね

    桜蕊降る原子炉の底の水               植木 國夫

    春雷や車窓ぬぐえどぬぐえぬ顔           吉野 和夫

    うららかや夫なし子なし愁ひなし            清水 里美

    枝垂桜揺るるも生きてゐる証             斎藤真里子

    虚子の忌をかのラフレシア開きけり          春日 石疼

    傾斜する地軸のありて囀れる             柳  正子

    汚染土山は怨嗟の山よ花の冷え           椊田 浩子

    梅林の風に満ちたる農日誌              渡辺 智賀

    幼霊の踏みあとのあり桜蘂               森田 倫子

    さくらさくら逝きし獣の土の上              須藤  結

    触れあはぬ両の乳房や花の雨            樫本 由貴

    リラ冷えやふつとにほへる棺の頬           江原  文

    飯舘の土も桜も人恋わず                髙橋  薫

    どこからも全生園は遠き花               後藤 悠平

    住めば都花びらの舞う兎小屋             山寺佐智子

    船底に賽子ふたつ蝿生まる              相原 光樹

    山の神の先触れやふと風花              黒河内玉枝

    幾星霜ありおぼろ夜の踏み台に            塚本万亀子





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