小 熊 座 2016/4   №371 当月佳作抄
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     2016/4  №371   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦



    震災のつぶさ見て来し春の嶺           小笠原弘子

    湯たんぽと話してゐしが眠りけり          阿部菁女

    かげろふの看板あたりまで此岸          我妻民雄

    踏まずして薄氷に乗る自由の身          津髙里永子

    たましいは肉質にして黒海鼠           渡辺誠一郎

    梅三分はらから四分五裂して           坂本 豊

    地の果てを見てきしごとし虎落笛         鯉沼桂子

    三寒と四温のあはひ牛啼けり           土見敬志郎

    ひしくいのたむろ残火のごときなり         須﨑敏之

    大住生せむと紅さす冬そうび            菊地恵輔

    けものらは看取られずゆく雪解川         船場こけし

    着膨れてみても隙間を埋めきれず         柳 正子

    春遅々と端すり切れし絵心経            中村 春

    北極の氷解けゆく南無阿弥陀           清水里美

    福島の慟哭として春氷                根木夏実

    雛まつり子ら来て影のふえにけり          日下節子

    星々の軋む音のみ凍豆腐              土屋遊蛍

    梅ほのか武具とは重きものなりき         草野志津久

    まとふもの朧と孤独スカイツリー          布田三保子

    消しかけの黒板のよう薄氷             松本廉子

    霊招く万の炎となる白梅か              横田悦子

    青空の軋むがごとし寒戻り              斎藤真里子

    被曝せし我に山河に春の雨             丹羽裕子

    アテルイの空の色なりいぬふぐり          佐野久乃

    夜の雪羽を休めてゐるやうな            棟方礼子

    白梅や死者の掌ほどの町              後藤悠平





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