小 熊 座 2016/3   №370 当月佳作抄
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     2016/3  №370   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦



    柿凍てて狼絶えし鷲家口          増田 陽一

    鮟鱇の口も春待つ一つなり         我妻 民雄

    何を得て何失いし返り花           越髙飛驒男

    鬼のような母の愛情冬泉          阿部 流水

    幾万の末梢神経淑気満つ         渡辺誠一郎

    猪独活の莞爾と枯れて無辺なり      栗林  浩

    未来とは臘梅の香に触れてより      日下 節子

    仮の世の凩詰まるゴミ袋          土屋 遊蛍

    おのが身のひかりは知らず白鳥来    鯉沼 桂子

    墓もまた宿と思へば冬の靄         瀬古 篤丸

    無口なる人の無口の息白し         関根 かな

    寒鯉の尾鰭残れる濁世かな        𠮷野 秀彦

    この町を離れぬどんど火とわれと     大久保和子

    蟷螂の怒りのままに死んで雪        久保 羯鼓

    思ひ出は落丁のごと冬の雁         斎藤真里子

    原子炉は人の世のもの白鳥来       根木 夏実

    未来図なき未来のありぬ寒の虹      丹羽 裕子

    死してなほ何見る魚やしづり雪       遠藤 志野

    余生とは余命にあらず帰り花        亀山 行房

    風花やつなぐ手ひとつづつ消えて      杉  美春

    魔法かかるまでもう少し冬の川       樫本 由貴

    帯留は木彫の椿寒の雨           佐野 久乃





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