小 熊 座 2012/12   №331 当月佳作抄
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     2012/12  №331   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    さるすべり天にひろがる女体なり          越髙飛驒男

    山背負ひかねし祠も神の留守            平松彌榮子

    色鳥の声溜りゐる忘れ潮              土見敬志郎

    駅裏の翅つき餃子秋の暮              我妻 民雄

    水鳥は水尾張りづめに神無月            大澤 保子

    紅玉の林檎まるごと死者の色            津髙里永子

    蚕豆の莢や昼寝をするならば            土屋 遊蛍

    炎の中の火柱の青雪催                佐藤きみこ

    野の沖に次の野のあり涼新た            関根 かな

    鬼灯を鳴らした頃は戦のみ              吉本みよ子

    草も木も声持たずして今朝の霧           小笠原弘子

    正義ほど怖いものなし吾亦紅             水月 りの

    三日月や木霊に逢ひに来よと言ふ          浪山 克彦

    落葉して木の影歩き出しそうに            柳  正子

    秋寂ぶやいかに食んでも眠りても           さがあとり

    鹽の神縁の下まで秋麗                 武田香津子

    鵙高音老いても子には従はず             野田青玲子

    大いなる影をもて蛇穴に入る             渡辺 智賀

    秋風がついてきさうな靴を買ふ            宇津志勇三

    秋の蝶止まりぬ被曝瓦礫にも             丹羽 裕子

    黒蟻は影で魂が透明                  山本美星子

    数といふ怖ろしきもの原爆忌             土屋 休丘

    ひとりとは鯊の寄り目を真似として          中村  春

    亡き友に父の句のあり新松子             上田由美子

    芋虫のごとき太首一揆の地              渡邊 氣帝

    夜長し戦後を語り死後語り               長尾  登

    身の内の音となりては一葉散る            菅原みよ子






 

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