小 熊 座 2011/12   №319 当月佳作抄
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       2011/12  №319   当月佳作抄

                                   ムツオ推薦


    塗りつぶす前も黒なり終戦日            中井 洋子

    稲妻のたび新しき闇生る               土見敬志郎

    樹の中の誰も知らない夕日の輪          平松彌榮子

    ひんがしに鎌首たてて枯れる芦           佐々木とみ子

    考えることをやめれば秋の空            上野まさい

    山羊はメエー羊はベエーと秋惜しむ         さがあとり

    鬼藪蘇鉄雁渡る国ざかひ               阿部 菁女

    帆船のやうなドレスや秋の風             田中  滿

    コスモスが揺れ止まず人恋ひ止まず        渡辺 規翠

    支へあふ骨の群れなり曼珠沙華           鯉沼 桂子

    水引の花絡み合い地獄谷               神野礼モン

    胸中に取り込むべきは曼珠沙華           安達 幸子

    空ふかく光生まれぬ牛膝               柳  正子

    をみなにはおみなの地獄水の秋           太田サチコ

    とぶ翅はみな対をなし草の絮             松岡 百恵

    しゃがんだり立ったり歩いたり秋思         吉本 宣子

    千年の津波に会いし月光か             俘  夷蘭

    海底を脱け出て蝦夷の荒紅葉            水戸 勇喜

    向日葵よセシウムなるもの吸いあげよ       加茂いつゑ

    ころりとは死ねそうにない秋渇き           岩井 タカ

    父と居て父遠くなる山桔梗              山野井朝香

    漆紅葉燃え極まりし息づかい             半澤 房枝

    木守柿過疎郡過疎村字過疎に           小野  豊

    山霧の声に裏木戸開きにけり            佐藤 みね

    避難所に集まれ集まれバッタまた          永野 シン

    薔薇の露鬼には鬼の迷ひあり            中村  春

    台風の目玉の中の誕生日              岡田 明子

    露草のおとがひ引きてたへてをり          瀬古 篤子



  

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