小 熊 座 2009/5 bQ88 当月佳作抄
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     2009/5 bQ88  当月佳作抄
  
                                   ムツオ推薦

          
 日の丸も臍の緒も無し春一番            越高 飛騨男

 はくれんを神と信じるまで老いぬ           上野 まさい

 父祖の血の塊であり春の闇             土見 敬志郎

 嘶いてまた春泥をかがやかす            武田 香津子

 春動く一万尺の海底も
                       田中 哲也

 死者になお迷宮のあり寒の星            土屋 遊蛍

 くぢら肉つめたし一つ星昏し             津高里 永子

 朧夜や魚食ふ魚を食ふは吾             渡部 州麻子

 近くは淋し遠くはぬくし春の雨            菅 邦子

 ライオンの顔の回りの春の蠅            大野 黎子

 寝返りを打つたび春は近づけり           下野 山女

 相愛とわかりし日より春の風邪           蘇武 啓子

 その先は知るよしも無し雪解川
          永野 シン

 春風やかたち崩れし広辞苑              佐伯 秋

 バザールの騒音連れて黄砂降る          吉本 みよ子

 下萌や靴に行先聞いてくれ              菊地 恵輔

 狛犬の尻尾は不動春一番              伊藤 紫水

 青麦という出口あり夢の中              澤邊 美穂

 うっすらと脂粉の匂い初蝶に             神野礼モン

 春泥に踏み出て空の奥処まで            宇津志 勇三

 啓蟄の地に鉄骨の組まれをり            半澤 房枝

 身のどこかに母の昏さや梅三分           清水 智子

 菊坂の底に至りし朧かな               田中 麻衣

 雛の日の波の音して仁王島             太田 サチコ

  
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