小 熊 座 2008年10月 特別作品
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    2008年10月   特別作品


       沖の鳥島    土 屋 遊 蛍


       竜宮の罠かもしれぬ梔子は

       颱風は沖の鳥島ハムエッグ

       跫の無き者集い盆の月

       病葉を挟む七十四頁

       しろがねの鱗が欲しき望の夜

   

       橋  脚    津 高 里永子


      漠と立つ橋脚二本梅雨の底

      万緑の森ごとダムに沈む村

      梅雨の検札車掌ペンギン歩きして

      切れぎれの立葵気をまぎらせば

      神妙に落つる滝ダム建設中




       日本モダン4  俘 夷欄


      春光に手の指透けて光太郎

      秋の空愛の藍染智恵子抄

      秋存亡日本人を選びけり

      雪七尺戦犯そしる怒濤かな

      道程やのっぽの冬の骨きしむ



       時間旅行    関 根 か な


       胸さぎ乗せ登山鉄道盛夏かな

       落雷の彫刻の森美術館

       ピカソ館昼寝の顔がありました

       夕立や歓喜の叫びかもムンク

       三伏や真昼の新宿歌舞伎町



       萱  原    八 島 岳 洋


       眼鏡屋に来て窓越しの初桜

       遠山はまだ降り止まぬさくらかな

       亡き母のこゑ菜の花の向かふ岸

       白木連合掌を解く九品仏
        
       御灯(みあかし)の翳花冷えの千社札



       灸  花    山野井 朝 香


       木槿咲く海に向いてる西病棟

       面談の午後は時々川とんぼ

       中年の感情線や未草

       銀行の隣は籠屋凌霄花

       夾竹桃背すじ伸ばして遠まわり





  
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